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真っ黒な空は空間をそれで埋め尽くす。
僕は辛うじて見える足元を頼りに
「帰らないと」とだけ胸に刻んで家へとひた走る。
「考えられない」という方が正しいけど。
(早く帰るんだ、何も考えちゃいけない)
大事な呪文のようにそう唱えながら、
できる限り素早く足を動かすことだけが・・・・・・
今の僕には唯一の救いだった。
それからしばらくして家の前にある
街灯の明かりが見えた時、
身体が道を覚えてくれていたおかげで、
そんなに遅くならなかったことに安堵して息を吐いた。
そして呼吸を整え一息吐くと、
部屋で寝ているであろう母さんを起こさないよう、
なおかつ抱えてきた牛乳を零さないよう
そっと扉を開けて中に入る。
「・・・・・・おかえり、ジョバンニ」
驚いて振り向くと、ベッドの上に上半身を起こして
僕の方に目を向けている母の姿があった。
「母さん、起きていたらダメじゃないか!」
慌てて彼女に駆け寄るとその肩に手を掛け
横になるよう促す。
「ごめんよ・・・・・・お前が『牛乳をもらいに行ってくる!』
って飛び出していってからずっと帰ってこないもんだから
心配になってねぇ」
そういうと彼女は案の定、咳をした。
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