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まじまじと顔を見上げる優花から目をそらし、誰に言うともなく彰が言う。
「ねえ、どうすんの?歩くの?」
ここから学校まで歩く…
何時間かかるんだろう…
返事を聞くまでもなく彰は歩き始めていた。
優花も黙って後を追っていた。
少し離れて、敦子と貴志がブーブー言いながらついて来る。
K線沿いの道をしばらく歩いていると、駅でもないのに電車が止まっているのが見えた。
「あんなのに乗れないよな。」
彰の目線の先には、窓ガラスの割れた車輌とパニック状態になって叫んでいる乗客がいた。
遠くのほうからサイレンが聞こえる。
「…なんかコワイ…」
優花がつぶやくと、少し低い声で彰がボソリと言った。
「俺達の親父もあの中にいるかもな…」
そうだ。優花より少し早めに家を出た父は、あの電車に乗っているかもしれない。
ハッとして優花は叫んだ。
「どうしよう!パパ…」
サイレンの音が間近にせまる。
今まで感じなかった恐怖感に襲われ、急に手足の力が抜けて立っていられなくなった。
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