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パパが乗っていたってケガしているわけじゃない…
自分にそういい聞かせて、もう一度電車の方に目を走らせたが、急に目の前が暗くなり、その場にしゃがみ込んでいた。
遠くのほうで敦子の声がするが何を言っているか聞き取れない。
「こっち!」
誰かの声がする…と同時に体が軽くなったような気がして顔を上げると、彰が体を支えて植え込みの影に座らせていた。
「…大丈夫?」
少し眉を寄せて顔をのぞきこんでいる。
「…うん…大丈夫。」
「顔…青いよ。」
「大丈夫。」
立ち上がろうと手をついた時、柔らかい感触に気がつき、慌てて手を離すと、白いadidasのバッグが目に入った。
反射的に彰の顔を見ると、眉を寄せたままの顔で
「スカート…汚れるだろ。」
と呟く。
白いバッグこそ汚れてしまうのに…
「ありがとう」
お礼を言ってバッグを渡そうとして思い出した。
そうだ、パパの事だ。
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