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優花の表情が変わったのに気付いた彰が
「親父たちは何年も電車で通勤してんだから、こんな経験しょっちゅうだろ。
心配しなさんな。」
と、笑いながら優花の頭を軽く叩いた。
そうよね…。ありがとう。
心の中で言いながら、優花も笑顔で頷いた。
「少し休んだら歩ける?」
「もう平気。」
「あれ~、ゆんゆん疲れたのぉ?」
のんびりした声の貴志に、敦子がまた早口で何か怒っている。
「自販機で水買ってきなさいよ!」
「どこだっけ?」
二人のやり取りを見て笑いながら彰が歩きだした。
少しして戻ってくると
「あまり飲んじゃ駄目だから。軽く口にする位で。」
と冷たい水のペットボトルを手渡した。
「ありがと…」
ポケットから小銭入れを出してお金を渡そうとする優花の手を遮って、彰は隣に腰をおろした。
「そういうのよくないよ。」
「…?」
真っ直ぐ前を向いたまま、もう一度同じ言葉を繰り返した。
「そういうのは、よくない。こっちが勝手にやった事だし、好意はありがたく受ければいいと思うけど。」
横顔が少し怒っているように見える。
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