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前の駅ほどの混雑はなかったが、電車は停まるものの、人の乗り降りができる状況ではなかった。
一つの車輌にここまで人が入れるのかという位、ぎゅうぎゅう詰めの車内。
見ているだけで息苦しい。
窓ガラスに頬を押し付けられ、歪んだ顔を戻す事もできない人達。
とてもこれに乗る気にはなれない。
「アハハ…」
突然 敦子が笑い出した。
「敦子!悪いよ!」
顔が歪んで動けない人を笑っているのだと思い、優花は小声で言った。
「違う違う、あそこ見て~!」
敦子が指さす方を見ると、貴志が満員の電車に乗ろうとして、閉まりかけるドアに片足を突っ込み、無理矢理に開けようとしている。
その背中を白いadidasのバッグで何度も叩いているのは、彰だ。
「貴志じゃん!バカだね~!」
と、大笑いの敦子。
「あのまま動いたらどうすんだろ。ホントにバカだ~。」
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