物語のはじまり

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その日の放課後、ルゥは担任に話があるからと呼ばれ、執務室へ来ていた。 その話というのは、一週間後に控えた春の遠足の事だった。 魔法学校では年に一度、遠足という名の社会科見学があり、その場所は学年毎に行き先が変わるのだが、2年生は人間界に行くことになっていた。 しかし…… 『ルゥさん。可哀想だけど、今のままのあなたでは今度の遠足は危険過ぎて、連れていけないわ。 何故かは、言わなくてもわかるわよね?』 ルゥはうつむき、膝においた手をギュッと握ぎる。 『……ほうきに巧く乗れないから……』 声が若干上擦り今にも泣き出しそうなルゥに、担任は申し訳なさそうな顔をした。 しかし、先生がそういうのも無理はなかった。 今回行く遠足は、ほうきで人間界の空を飛び人間の世界を見て帰るというものだったからだ。 ルゥのほうき乗りの腕前は、前に言った通り。 もっと詳しく言うと、地面に足を延ばせば着く位にしか浮かず、さらには途中で足を着いて立ってしまうほど。 まるで、自転車の補助輪が外せないといった感じだ。 流石に、そんな子を上空何百メートルを飛行する遠足など連れて行けるはずもない。先生の判断は最もである。先生は、ルゥの頭を優しく撫でていう。 『楽しみにしていた気持ちは良くわかるわ……昨年は行けなかったものね。 だから私も、できることなら連れていってあげたい。 でも何かあってからでは遅いの、わかってちょうだい?』 その言葉に、とうとうルゥの目から大粒の涙がポタリポタリと落ちた。 それというのも、ルゥは昨年の遠足も全くおんなじ様な理由で行けなかったからだ。 昨年の遠足は、学校裏の森……[魔海]と呼ばれる森にある妖精の泉へ行くことだったのだが、魔海には恐ろしい生き物が沢山いるため、もし出くわした時のために、簡単な防衛魔法を唱えられることが遠足へ参加出来る必須条件だった。 が、当然のようにルゥにはそれが出来なかった。 そして一人置いてけぼりをくったのだ。 遠足に行った皆は帰ってきた後、より一層絆を深め、そして楽しそうに遠足の話をしていた。 そんな皆の輪から一人仲間外れとなったルゥは、それから皆と馴染めず、ことある毎に皆からかわれ初めたのだった。 そんなことがあったから、ルゥは今回の遠足には何としても参加したかった。 ルゥは震える唇をギュッと噛み締め、意を決すると先生にこう切りした。
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