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ルゥは、下校時間を過ぎ誰もいなくなった廊下を、ほうきと魔法書(教科書)を掴んで日の落ち始めた校庭へと出ると、まだ息のあがる肩を上下させながら、パラパラと魔法書をめくった。
『えっと……あった!ほうきの乗り方。
まず落ち着いて深呼吸、精神を集中する……』
ルゥは読み上げると本を見開いたまま地面に伏せ置き、読み上げた通りに深呼吸をした。
そして、また本を手に取り次の行を読む。
『次に、地面に置いたほうきに利き手をかざして『来い』と命令、手に掴……』
と途中まで読み上げて、先ほどからずっと右手に掴んだままのホウキをみると、ルゥは慌てて地面にホウキを置きなおした。
『やりなおし!!』
片手に魔法書を持ったまま地面にホウキを置き、深呼吸。精神を落ち着つけ、次に利き手をホウキを呼ぶ……が来ない……。
本来ホウキは、持ち主の魔法使いが利き手をかざして呼ぶとくるように契約しているのでくるものなのだが、契約者が未熟過ぎると嘗められて来ないことがある。
ルゥは……
『まっ、待って!!どこ行くの!?』
ホウキに逃げられる始末……完全に嘗められている。
ルゥはホウキを追いかけ回す。
因みに、ホウキ自体に飛ぶ力はないので、ホウキは地面を走って逃げている。
やっと、捕まえたホウキの柄を握りしめると、ルゥはまだ暴れるホウキに無理やり跨った。
『とりあえず、飛ぶ練習が先!!』
ルゥは今まで一度もホウキを呼べたことがなく、結局いつもいきなり跨って乗っていた。
そして、今日も……。
ルゥは片手に本を見開きながら、ホウキの柄を三回撫でる。
すると、ホウキが大人しくなる。
ルゥは小さな声で言う。
『飛べ。』
ホウキはルゥを乗せてフワリ……地面から浮いたが、その高さ50cm。
ルゥは、渋い顔をしながら言う
『行け!進め!』
ホウキはルゥを乗せふらふらと蛇行しながら、進むが10mいかないとこでパタリと落ちてしまった。
ルゥは足を付きホウキに言う。
『飛べ!!』
しかし、ホウキは少し浮いてはすぐ落ちてしまう。
『なんで……』
ルゥは、山の向こうに一筋だけ光を残して落ちてしまった太陽に頬を真っ赤にしながら、涙を零し泣き崩れてしまった。
わんわんと泣くルゥにホウキはルゥを置いて逃げ出してしまった。
ルゥがホウキを無くすのはこれで8回目。
その8回の内逃げられたのは7回。
あとの1回は……。
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