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ルゥは一人トボトボ家路へと着いた。
片手には魔法書だけ。
ホウキはやっぱり戻って来なかった。
『ただいま。』
不気味に枯れた木が家のすぐ脇に生え、その枝が小さな三角屋根を掴んでいるように見える、さらに壁にはツタが絡んでいる。
ちょいと一見ホラーな家。
それがルゥの家。
そして、ドアをあけた先は真っ暗。
ルゥのただいまに返事はない。
カチャカチャと暗闇に音がして、ルゥがランプを灯すと明るくなった家の中はガランとし、壁際のチェストの上に並んだ写真立てだけが賑やかだった。
ルゥはその前にゆきもう一度ただいまを言った。
パパ、ママと付け足して。
ルゥの家の両親はルゥが学校に入る少し前に家が火事になり、ルゥだけを残し2人共亡くなった。
何故ルゥだけが助かったのか、それはその日学校に入学する祝いにと両親からもらったルゥのホウキのおかげだった。
ホウキがルゥを柄に乗せて、家の外まで連れ出し助けたのだ。
でも、助け出せたのはルゥだけ。
ホウキが走って乗せられるのは幼いルゥだけだった。
しかし、ルゥはそれを知らずホウキに頼んだ。
まだ家に残る両親を救い出すようにと。
結局、家の中で物の下敷きになっていた両親と、ルゥのホウキ、それからみんなで住んでた家は燃えてなくなってしまった。
そして、街のみんなの……一応好意で、今のホラーハウスに住むことになったのだ。
ルゥは一人写真立てに向かって話しかける。
『また、ホウキが無くなっちゃったんだ……このままじゃまた遠足行けないや……。
どうしたらいいの?パパ…ママ…。』
答えなどあるはずもなかった。
ルゥはだんだんまた悲しくなって、その場に座り込んで静かに泣いた。
そんなルゥの姿を窓越しにひっそりと見つめる影があった。
その影はひとしきり眺めると、夜の闇の中へと消えていった。
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