道端に転がる石ころって目立たないでしょ?

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「長谷川君ってホント素敵よね。」 私の隣りで、凛子が溜め息混じりに呟いた。 「ええ…そうですね」 髪を指に絡ませながら 「伊藤さんも長谷川君狙い~?!え~嘘!!!」 鼻で笑われた。 黒縁眼鏡を指で押し上げながら 「失礼します」 化粧室へと駆け込む。 「はぁ…」 私、伊藤駒子は24歳会社員。 黒髪は後ろで一つ縛り 黒縁眼鏡 周りは私を「地味」だと言う。 地味であることで、他人は私に興味を抱かなくなる。 それはまるで道端に転がる石ころのように 歩いている人に蹴られても 傷つけられたことすら 気付かれない。 でもそれでいい。 地味であることで 他人との距離がとれる。 私は 私を守れる。
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