秒速7.46メートル

2/2
前へ
/4ページ
次へ
私のスピードは秒速7.46メートル。 高鳴る鼓動が止まらない。 がむしゃらに進む原動力は盲目的な気持ちだけ。 ただ、ただ前に進む事に全てを費やす。 少しでも前へ。 少しでもその先へ。 自分の限界の先には、共有できる時間がプレゼントされる。 走る喜びが、いつの間にか別の喜びに代わったのは何時からだろう? 0.6秒が自分に立ちはだかる壁。 この強固な壁を破らないかぎり、その先には進めない。 始めは0.1秒速くなるだけで誉めてくれる先輩の笑顔で十分だった。 でも、今では0.1秒では我慢できない。 自分の遥か先を駆け抜ける彼と少しでも一緒にいるには、この壁は突破しなければならない最大の敵。 告白する勇気は無いけれど一緒にいたい願望は揺るがない。 全国五位の実力を誇らしくも、うらめしくも思う。 その彼と歩むには・・ 走るのには・・ 自分の限界を越えるしか無い。 「ぜぇっ~たい全国、いくぞぉ~!」 一声吠えて、私は再び走り出す。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加