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私のスピードは秒速7.46メートル。
高鳴る鼓動が止まらない。
がむしゃらに進む原動力は盲目的な気持ちだけ。
ただ、ただ前に進む事に全てを費やす。
少しでも前へ。
少しでもその先へ。
自分の限界の先には、共有できる時間がプレゼントされる。
走る喜びが、いつの間にか別の喜びに代わったのは何時からだろう?
0.6秒が自分に立ちはだかる壁。
この強固な壁を破らないかぎり、その先には進めない。
始めは0.1秒速くなるだけで誉めてくれる先輩の笑顔で十分だった。
でも、今では0.1秒では我慢できない。
自分の遥か先を駆け抜ける彼と少しでも一緒にいるには、この壁は突破しなければならない最大の敵。
告白する勇気は無いけれど一緒にいたい願望は揺るがない。
全国五位の実力を誇らしくも、うらめしくも思う。
その彼と歩むには・・
走るのには・・
自分の限界を越えるしか無い。
「ぜぇっ~たい全国、いくぞぉ~!」
一声吠えて、私は再び走り出す。
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