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大学の休みは昼からシフトに入る。田舎のコンビニは、平日ともなれば、暇を持て余してしまう。
午後四時を回って、寒さに頬を赤くした学生が、ぱらぱらと目立ち始めた。学校が終わり、下校の頃合いである。
彼女も、その中の一人だった。地元の高校生より華やかさのある少女で、いつも四時過ぎに、ひとりでやって来る。
コートを着た背中が雑誌棚で止まるのを、彼はレジから視認した。彼がシフトに入っている日の慣例だった。
その少女は、今春、東京から東北にやって来た。聞けば、彼女の母がこちらの出身で、彼の母とは旧友らしい。そんな縁もあり、彼は彼女のことを、よろしく頼まれていたのである。
東京の華やかさや利便性と比べれば、東北の片田舎など、つまらない場所に違いない。友人もできた様子なのに、その少女は未だに、どこか頑なな印象だった。
「あーざっしたぁ」
会計を済ませた学生がレジを離れる。感謝など微塵も感じられない気だるい声で言って、彼はちらりと、雑誌棚を見やった。
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