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黙り込む私に、アツキは焦りだした。
「あっ、ごっごめんっ!オレ、最低よね。」
「……」
「ホントにごめん。今の忘れてっ。ドライブしよっ?あっ、でも気分悪いよね?ごめんっ!どうしよ。
オレ、ホント最低だ。」
アツキは、そう言いながらハンドルにうなだれた。
信号が変わり、車を発進させる。
アツキは呪文の様に
「ごめん」と「オレ最低」を繰り返した。
その姿が可笑しくて、思わず私は吹き出した。
アツキは、不思議そうな顔でチラッと見た。
「何が可笑しいの?」
「ごめん。だって呪文みたいに、ごめんとオレ最低って言うから。つい可笑しくて」
そう言いながらも笑う私に不満そうな顔
をした。
「だってさ、せっかく仲良くなれたのにさ。あんな事言って怒らせたと思ってさ。」
「怒ってないよ。」
「えっ?」
「ちょっと驚いたけど…怒ってないから大丈夫。」
そう言うと、アツキは笑顔になった。
「良かった-。オレ、もう嫌われたと思った。良かった。」
「おおげさだよ。」
「おおげさじゃないよ-」
そう言う彼の横顔を見て私は笑った。
「いいよ。…ホテル」
「え?えっ?」
急に焦り出す彼に私はもう一度言った。
「ホテル、行こう。」
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