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着信は彼からだった。
すごい偶然だ。
私は少し戸惑う。
運命だとか信じるような歳ではないが、一瞬「運命もあるかも」と思った。
でも次の瞬間には、そう思う自分が馬鹿らしくも思った。
そんな事を考えてる間も彼からの着信は、鳴り続ける。
私は、慌てて電話に出た。
「もしもしっ」
少し声が上擦る。
「あっ、ごめん。忙しかった?」
彼は申し訳なさそうに言った。
「いや、大丈夫。」
「そっか。なら良かった。で、今何してるの?」
彼の明るい声が受話器からこぼれる。
「家にいるよ。何も予定なくて。」
自分で言いながら、寂しい女だとガッカリする。
きっと彼も、そう思っているだろう。
嘘でも見栄を張った方が良かったかな…
「マジでっ!?じゃあさ、今から遊ぼうよ!」
「へっ?」
我ながら間抜けな返事だと思った。
きっと顔も間抜けになっているはずだ。
だけど
彼の突然の誘いに、驚いたので仕方ない。
彼は、そんな私の様子をわかるはずもなく、話を続ける。
「予定ないならさ、カラオケ行かない?この前カラオケ行きたいって言ってたからさ-。」
「うん、言ってたけど…」
「嫌?」
彼はストレートに聞いてきた。
断る理由もない。
今までだって、出会い系の男と簡単に会って来た。
彼も、一緒だ。
会ってしまえば、それで終わり。
みんな、そうなんだ。彼も含めて。
所詮
出会い系なんだ。
そういう私だって、出会い系の安い女なんだ。
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