Genocide

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春。 旅立ちと別れがあり、始まりで終わりな季節だ。 公園でイヤホンを耳に、手には缶コーヒーを持つ少年。 秒刻みに時間をチェックしているのが目立つ、どうやら誰かを待っているらしい。 「おはよ!ごめん、遅れ…」 「…走るぞ!!」 現れた少女に、少年は声を荒げて立ち上がった。会うなり、腰をあげてさっさと歩き出す。 若葉が風に踊るようにして、さわさわとした音を鳴らす。 まあ少年の耳にはイヤホンからの音楽しか聞こえていないが。 すぐに後ろから手を引っ張られて、少年の足は止まった。 振り向いて返す。 「全力ダッシュ。乗り遅れるだろ?」 「うんっ!」 それで、二人は走り出した。少年が一歩先に、少女も後に続いて走る… 「…ったく!!今日だけは遅刻はダメだろ」 「ごめん!!昨日…わくわくして眠れなかったの!」 会話には笑顔があった。二人のサイフの中には同じ電車の券。同じ時間の券は二人が今日向かう予定の、遊園地までの通行手段。 「絶対行くんだ、もっと飛ばすぞ」 「うん、絶対行く!」 浮かれてる。 だって、本当に楽しみだったから。 付き合ってから三ヶ月。 中学を卒業して、まだ高校生でもない二人。 風丘蒼<カゼオカ・アオ>と、進藤花<シンドウ・ハナ>の初めてのデートだ。
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