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公園から数分。
蒼と花は、電車の座席に座って息を整えていた。なんとか間に合った様子。
もう三ヶ月もたつのに、まだ一回もデートしていなかったから、その分今日は本当に楽しみにしていた。
「楽しみだね」
車内なのを気にかけてか、花は囁くように言う。
「浮かれすぎて怪我するなよ?」
「しないよ~。でも、いっぱい歩き回るんだからね」
はいはい、と軽く流して蒼は視線を前に戻した。前の席には人がいなく、その後ろの窓には一瞬で過ぎていく景色たちがあった。
「っつか、もう楽しんでるけどな」
蒼はそう言って笑ってみた。花も笑って返す。
「え?まだ着いてないよー」
「デート始まってんじゃん。俺だって、楽しみにしてたんだからな」
言ってから恥ずかしくなった。すぐに花も笑ってくれてよけいに舞い上がる蒼。
浮かれているのは蒼のほうかもしれない。
本当にわくわくしている。
この時すでに、蒼たちの住む地域にも「拳銃」が運送されていた…
そんなこと知る由もない。
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