Genocide

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東京から茨城にかけての高速道路。その途中のパーキングエリアには、三台の大型トラックが停車されていた。 広い駐車場の中、一際目立つ「迷彩柄」の軍用車。つい先程東京を出発したばかり。今向かうのは茨城県の県庁所在地「水戸」である。 通りすぎる人たちは、必ず一度は目を向けて通る中… 一人だけ。 ベンチに座って、三台を凝視する者がいた。 黒い、全身をおおうほどに長い服を着ていて顔はよく見えない。 そこから数十キロ離れた地、埼玉県のとある駅に一台の電車が停車した。 茨城から来たその車両には、会社に行く人もいれば遊びに行く人もいる。 「着いた!」 「はしゃぐな!…恥ずかしいだろ」 もちろん蒼と花は、「遊びに来た人」だ。 「ねえ蒼!あれあれ!観覧車見える!」 やたらとテンションが高い、やっぱり嬉しいようだ。 それなら蒼は大満足だが。 「観覧車見えたくらいではしゃがない!…今からあそこに行くんだから」 「道、分かるの?」 「…観覧車に向かって歩くんだよ」 「…無計画!!」 「うっさい!!」 いつもこんな調子。 でも、なんやかんやで仲はいいんだ。蒼と花は、少し足早に観覧車に向かって歩き出した。 普段生活している隣の県だ。別に景色に大した違いもない。 ただ、どことなく綺麗な気がした。それは、来なれていない未知な地に足を踏み入れたから。 気分はさらに上がっていく。
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