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「花…ちょっと休まねぇ?」
案の定、蒼は疲れきっていた。疲労の蓄積は、彼の顔を見れば一目で分かる。
「じゃあ、アレ…」
花が少し躊躇しがちに言うから、ゆっくりと指の指す方を見る。
…観覧車だ。
「…あれ乗るの?」
花は黙って頷く。
蒼は、たじろぐ。
もう陽も暮れだした。春とはいえ、さすがに暗くなってくる。観覧車は極力避けたかったのだ。
…観覧車っつったら、恋人同士が乗る定番なヤツだし。まぁ恋人なんだろうけど…
「………ダメ?」
ダメなんて言えるか。
「分かったよ。じゃ、行くか」
「うん!」
今日一番の笑顔かもしれない。嬉しそうにしながら、花は蒼の手を握った。
あ…今日、初めて繋いだ。
仕方ないか。花が止まらなく走りまくるんだから…
蒼は相変わらず花に引っ張られて走る。やっぱり、蒼たちには「歩く」より「走る」が合っている。
だから、笑顔が咲く。
この幸せに、終わりなんて来ないんじゃないか?…
そんな想いさえ感じられなくなるのに、そう時間はかからなかった…。
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