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「与那嶺了っ!」
温暖化のせいなのかは知らんが、残暑が厳しく、汗が滲み出る九月上旬。
昼休みということでメシを食っていたところに、眉間に皺寄せた少年が乱入してきた。制服のネクタイの色を見る限り、二年の先輩らしい。
「何なんだよ、昼飯時に……」
疲れたように呟きながら、呼ばれた張本人――与那嶺了(ヨナミネ・リョウ)は、弁当箱を抱えて机の陰に入り込んだ。
面倒事が嫌いなりょーちん(あだ名、本人は嫌がる)からすれば、迷惑以外の何物でもないのだろう。
「どうしたんスか、先輩?」
どうやら知り合いらしい、他のクラスメートが声をかけていた。虫の居所が悪いらしく、胸倉を掴まれる。
「与那嶺了ってのは誰だ?」
さっきも聞いたが、りょーちんが目的のようだ。何か恨み買うようなことでもしたのかよ?
「なわけねーだろ。そもそも誰だ」
「いや、俺、野郎に興味無いし」
「何言ってんのよ、アンタ達は」
二人で首を傾げていると、横から呆れたように声をかけられた。
「ちょっと座るわよ」と、さっきまでりょーちんが座っていた席に陣取るのは、室峰利菜(ムロミネ・リナ)。
抜群の容姿から来る圧倒的な存在感、人を惹きつけるカリスマ性を持つ……リーダー的存在みたいな感じで、ついでに言えばクラス委員長だ。
そんな彼女は、俺らの良き友人でもある。りょーちんからすれば、腐れ縁らしいが。
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