第一章

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「あの人は空手部の斎藤庸介先輩。  知らない? この学校で唯一全国出場してる部のエースだから、有名だと思うんだけど」    はて、俺にはとんと覚えが無いが……りょーちんは?   「……知らないな」    首を傾げていた。  眉が寄っているのは、因縁つけられる意味が分からないからだろう。   「アンタ達……もうちょっと周りを――」    途切れる利菜の言葉。傍らに立つ誰か。  顔を上げれば、それは斎藤庸介先輩で。   「お前が与那嶺了か」    その視線は、利菜に向かって振り返ったりょーちんをしっかり捉えていて。      ――面白くなりそうだ。    災難に遭遇したりょーちんを余所に、俺は心中でニヤリと笑んだ。       「ええ、そうですけど。何か用ですか、先輩?」    どうやら観念したらしく、立ち上がって向き合うりょーちん。もちろん、立ち上がる時には凄い溜息吐いてた。    しかし相手は気にしない。   「与那嶺了、俺と勝負しろ!」    と、炎を瞳に宿らせ、叫ぶように言った。
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