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「あの人は空手部の斎藤庸介先輩。
知らない? この学校で唯一全国出場してる部のエースだから、有名だと思うんだけど」
はて、俺にはとんと覚えが無いが……りょーちんは?
「……知らないな」
首を傾げていた。
眉が寄っているのは、因縁つけられる意味が分からないからだろう。
「アンタ達……もうちょっと周りを――」
途切れる利菜の言葉。傍らに立つ誰か。
顔を上げれば、それは斎藤庸介先輩で。
「お前が与那嶺了か」
その視線は、利菜に向かって振り返ったりょーちんをしっかり捉えていて。
――面白くなりそうだ。
災難に遭遇したりょーちんを余所に、俺は心中でニヤリと笑んだ。
「ええ、そうですけど。何か用ですか、先輩?」
どうやら観念したらしく、立ち上がって向き合うりょーちん。もちろん、立ち上がる時には凄い溜息吐いてた。
しかし相手は気にしない。
「与那嶺了、俺と勝負しろ!」
と、炎を瞳に宿らせ、叫ぶように言った。
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