第一章

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「あ、斎藤先輩……」      珍しく気まずげな美咲ちゃん。  りょーちんの眉が僅かに反応。さっきの先輩の反応のこともあるし、何か勘付いたようだ。     「先輩、俺の妹と知り合いなんですか?」   「ああ、さっき告白させてもらった」      ぶち、と何かが切れた音がしたのは、俺だけだろうか。  顔を俯かせたりょーちんが、キレた時特有の……壮絶な笑みを浮かべている。     「なるほど。……それで? 何故、俺と勝負したいんですか?」      声は普通。殺気の隠蔽も完璧。  先輩と美咲ちゃんからは顔が前髪で隠れているものだから、二人とも今のりょーちんのヤバさに気付かない。     「ああ、速攻でフラれたんだが」    鎮火する気配。  りょーちんの変化に気付いていたクラスメートも、ホッと一息――。   「その時に『兄さん以上の人じゃないと興味無いんです』と言われてな。    だったら勝てば振り向いてもらえると思ってな」      ガソリン注ぎ込むんじゃねぇぇえええ!!      クラス全員が叫びたかった。したら殺される気がして、心の中で叫んだが。     「…………はぁ」      しかし、りょーちんの反応は意外なもの。  疲れたように溜息を吐き、美咲ちゃんの方に歩いていく。
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