電話の向こう

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 これも「友人の家」の友人との話である。  私の実家も県内なのだが、大学最寄り駅まで行く電車が少ない為、大学の近場にアパートを借りていた。  しかし一人暮らしを始めた途端に体調を崩しまくり、それが原因で留年という事態になったので、結局アパートを引き払い、今は実家から通っている。元々身体が強くない上貧血持ちなのに一日一食しか食わなかったり、バイトにかまけて睡眠を充分取らなかったりしたので、当然の結果である。もっと自分の体調と体質を鑑みるべきであった。  まだ一人暮らしをしていた頃、私は用も無いのに友人に電話をかけた。彼女とは仲が良いので、しばしばこういう事をしていた。  下らない事を数十分喋っていたが、その間ずっと、電話の向こうから彼女以外の話し声がする。  混線の聞こえ方とも違うので、テレビでもつけているのだろうと思っていた。しかしそれにしてもうるさいので、「あんた何観てるの?」と尋ねた。 「え?」 「いや、ずっと話し声がするからさ。テレビでしょ?」 「……私、今テレビつけてない」  一瞬沈黙して、私は「またまたぁ」と言った。冗談だと思ったのだ。しかし友人は血の気の引いた声になり「本当だって! あんたこそ怖い事言わないでよっ!」と半狂乱になった。  その後友人はすっかり怯えてしまい「怖いから泊まりに来い!」と言い出したので、私は友人の部屋に行く事になった。  友人の実家は、リアルお化け屋敷である。彼女は引っ越しの際実家から、家財道具の他に何か、余計なものでも荷造りして連れて来てしまったのだろうか。
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