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翌日、私は再び児童館を訪れた。本当にそこしか遊べる場所の無い田舎だったのである。
いつもは図書室に直行するのだが、ふと、肝試しはまだやっているのだろうか、と前日の肝試し部屋を見に行った。
どうやら一日限りのイベントだったようで、暗幕も外され、そこはいつもの遊び部屋に戻っていた。何だかつまらないなあ、と、私はその部屋に入ってみて気付いた。
前日は気付かなかったのだが、私が鉛筆を受け取った小窓は、肝試し部屋のものでは無かった。隣の部屋の窓だったのだ。肝試し部屋と隣の部屋は壁で仕切られており、すぐに行き来する事は出来ない。
よくよく考えると、小窓が閉まる時、手は小窓を触らなかった。手が引っ込むと同時に、一人でに閉まったのだ。
あれは幽霊だったのか、それとも妖怪だったのか。解らないが、私は怖いとは思わなかったし、今も思っていない。むしろ、鉛筆は別に欲しく無かったとはいえ、親切なものである。
あの鉛筆は使っているうちになくしてしまったが、これははっきりとおばけの存在を見た私の貴重な体験であり、おばけはいるのだと今も言い切れる所以である。
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