JUICY NIGHT

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茶色く日焼けをした肌の航は、切れ長で鋭い目をしていた。だけど二重の線がくっきりと刻まれているからなのかとても綺麗で、それはとても印象的だった。 人から敬遠されがちな外見ぐらい、別に気にしない。人との関係を築くのに必要なものの中に、そんなものは、たいした要素にはならないから。 だけどあの時の馴れ馴れしい口調や態度は、間違っても好意が持てる相手じゃなかったことだけは、確かだ。 あのファミレスで初めて会った日を境に、航の姿を目にする回数が増えた。隣に住んでる隆之の家に顔を出すようになったからだ。 二度目の出会いは、隆之の部屋のドアを開けた時だった。ベッドに寝転がっていたのが部屋の住人じゃなく、航だったのだ。 この男があたしに会う為に、この部屋に入り浸っていたんだとは、後から聞いた話。 隆之と同じ定時制の夜間高校に通っていた航が、会わせろと何度も頼んだのに、首を縦に振らないから、押しかけてきたんだそうだ。 一瞬、立ち尽くしてしまった。 読んでいたんだろう漫画本をのせていたせいで顔は隠れていたけれど、髪とピアスですぐにあの男だと分かった。 部屋を見渡してみても、その住人はいない。となれば、ここにいる意味なんかない。回れ右をして帰るだけだ。 音を立てないようにそっと部屋の扉を閉めている時、寝ていたはずの男が声を発した。 「喰ったりしねぇから逃げなくていいって」 これは文字通り、飛び上がるほど驚いた。びくりと跳ねたあたしを見て、笑いながら起き上がった航が、待ちくたびれたと言って欠伸をした。 「タカに会わせろって言ってんのにさぁ、ぜんっぜん聞いてくんねぇんだよな、あいつ。家が隣ってのは知ってたけどさすがにいきなり行くわけにもいかねぇしさ」 ……これもはっきりと覚えている。またか、と、うんざりしたからだ。 だからきっと、この時のあたしの顔には現れていたはずだった。顔を知った程度の男が、さも親しげに話しかけてくる。その嫌悪感が。 にも関わらず、男は嬉しそうに笑い話しかけてくる。 嫌だった、本当に。その笑顔も声も。
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