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アステロイドベルトから地球への帰還航路をとる300メートルの中古商業宇宙船のそばを、なんとも奇妙な物体が漂流していた。
ずんぐりとした宇宙服を着た船外活動中のクルーが偶然発見したそれは、一見どこかの宇宙船が残したデブリ(ごみ)に見えたのだが、ブリッジに鳴り響く接近警報によって調査の必要ありと判断された。
「ジョンソン応答して下さい、そいつは肉眼で確認できるんでしょ?」
無重力状態のブリッジの中でシートに身体を固定されたセルゲイが、モニターに映る宇宙服の男に声をかけた。ブリッジは4人乗りでメインスクリーンの正面に操縦士のセルゲイが座り、その後ろに船長席がある。
そして船長の両脇に航法士と機関士の席が設けられており、この2席は船長席と逆さまに設置されていた。
《なんだろうな、すごくキレイだ………表面は完全に鏡のようだぞ》
「やはり放熱板ではなさそうですね………よし、カメラに捉えた………なるほど、本当に円鏡のようだ………もし縦回転じゃなく円周回転していれば発見できないな、ナンですかね船長?」
「うむ。ジョンソン、こちら船長だ………目測でいいから接近距離とスケールを報告しろ」
ブリッジの中央、いくつかのモニターに囲まれた席で髭の濃い大柄な船長がジョンソンに命じる。
《自分からは20メートルも離れてません。ダッチマン号までは100メートルくらいにまで接近中………スケールは直径1メートル前後、厚さ10センチくらいの円鏡で、船に対して40度から50度の角度でデングリ返ってますね》
「何の反射鏡だろう………メリック、あれだけ大きければレーダー輻射があるはずだぞ。マイクロ波スキャンは確認したのか?」
「確認したも何も船長、まったく反応ナシですぜ………ミリ波レーダー、マイクロ波レーダーともにゼロ、赤外線ゼロ、当然ながら距離測定レーザーも帰ってこない。放射線測定値にも問題ナシとくれば――」
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