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船長席の横で逆さまになったシートから、メリックが何か含んだ表情を返してきた。
「マニアめ………それは忘れろ。セルゲイ、レーダーにも映らない漂流物に接近警報が鳴った理由は何だと思う?」
「待ってください…………こいつで、どうだ………?うわ、だめだ船長」
「どうした」
「原因は警報ルーティンがバカになったせいですよ、船体セキュリティーに衝突警報まで流しました………現在ダッチマン号は地球の第7中央管制センターに救難信号を発信中。安全管理コンピューターが勝手に巨大タンカーと衝突したと思い込んでいます!」
髭面をしかめた船長は頭を左右に振って溜め息をつき、直ちに信号の発信を解除させた。
「おいおいおい船長、セルゲイ、コイツはいよいよ怪しくなってきたじゃないか………どんな探知にも引っ掛からないナンて有り得ないぜ、間違いない、あれは宇宙人のUFOに違いないぞ!」
《気は確かかメリック、どこの宇宙人が円盤型の鏡に乗って飛んでくンだよ………しかも1メートルしかないンだぜ、ホラ、あと5メートルもすれば触れちまう》
宇宙に漂うジョンソンはダッチマン号に振り返ると、近づいてくる円鏡に向けて手を出したり引っ込めたりしてみせる。
「やめんかジョンソン、もっと距離を取れ。反射鏡の角が鋭利なら宇宙服が破れる恐れがある……それよりセルゲイ、そろそろ月の軌道を越える頃だぞ。制動噴射タイミングを確認、カウントダウンを航法コンピューターから船体管制へシンクローさせろ」
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