全ての始まり

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(しず……) 「え?何?何ていっているの?」 沙羅は辺りを見渡した。 ふと後ろに人影があらわれた。 男が悲しげな眼差しでこちらをみている。 出で立ちは教科書で見るような袴姿だ。顔はよく見えないが長い髪を後頭部で一つに結い上げているよう。 (しず…か) 「しずか……??誰?」 (愛して…いる…しずか) 見た事もない男に話し掛けられている。 何の事を話しているかも分からない。 だが、不思議と懐かしく感じた。 気付けば頬に涙が流れている。 (しずか!!ずっと…言いたかった………) 「聞こえない!何て言ってるの?」 男の姿がスゥッと遠ざかっていく。必死に走るが全く追い付けない… 「待って!!聞こえないの!!行かないでぇ!!」 ガバッ!! 沙羅は飛び起きた。うっかり机の上でうたた寝をしてしまっていたらしい。 その頬は涙で濡れている。 「やだ……涙が……何だか変な夢だったなぁ……よく覚えてない……まぁいっか。」 と言いながら何気なく時計を見る。 「あああああ!!ヤバッ!!舞踊の稽古あるの忘れてたぁ……早くしないと!」
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