1098人が本棚に入れています
本棚に追加
(しず……)
「え?何?何ていっているの?」
沙羅は辺りを見渡した。
ふと後ろに人影があらわれた。
男が悲しげな眼差しでこちらをみている。
出で立ちは教科書で見るような袴姿だ。顔はよく見えないが長い髪を後頭部で一つに結い上げているよう。
(しず…か)
「しずか……??誰?」
(愛して…いる…しずか)
見た事もない男に話し掛けられている。
何の事を話しているかも分からない。
だが、不思議と懐かしく感じた。
気付けば頬に涙が流れている。
(しずか!!ずっと…言いたかった………)
「聞こえない!何て言ってるの?」
男の姿がスゥッと遠ざかっていく。必死に走るが全く追い付けない…
「待って!!聞こえないの!!行かないでぇ!!」
ガバッ!!
沙羅は飛び起きた。うっかり机の上でうたた寝をしてしまっていたらしい。
その頬は涙で濡れている。
「やだ……涙が……何だか変な夢だったなぁ……よく覚えてない……まぁいっか。」
と言いながら何気なく時計を見る。
「あああああ!!ヤバッ!!舞踊の稽古あるの忘れてたぁ……早くしないと!」
最初のコメントを投稿しよう!