第壱幕:雨音

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  『なぁに、私にはコレがあります。杖の代わりになるでしょう。ささ、どうぞ』   お爺さんは傘を見せながら笑顔で片目をつぶる。 傘を杖代わりに座席を譲るお爺さん。 笑顔でお辞儀して、座席に座るお婆さん。 もはや言葉は要らなかった。   素敵なウィンク お爺さん。 その心意気 おGさん!   そしてバスは走り出す。 『次は、○△布団店前。○△布団店前。』 車内は、まだ子供達の騒がしい英語が飛び交っていたが、お婆さんの心には暖かい気持ちがいっぱいであった。   車外に目をやると、雨脚は少し増している。 窓を叩く雨音は、おGさんへ贈られた拍手のように、お婆さんの胸に響いていた。  
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