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「お客さん、どうして信じてくれないんです?」  無精髭の運転手は、シートに背中を埋めた姿勢で、ついにうんざりと言った。だいぶ年季の入った、シミがついた白い天井をぼんやりと眺めていた。  まだ若く、年齢は三十を少し越えたといったところか。ドレルは運転手が、自分とたいして変わらない若輩者だということについても、疑心めいた不安を感じていて、今だに固く締めたシートのベルトを両手でしっかりと掴んでいた。  運転手は長い足を組み、両手を合わせて首の後ろにまわす。まるでビーチで肌を焼いているような格好だった。時折下手くそな口笛まで吹いて、ドレルの不安を払拭しようとでもしているのか、ニヤニヤとした微笑みまで見せた。  もう運航予定の離陸までに数分だというのに、運転手はまだベルトも着けず、背もたれを倒したままだ。運転手は後部座席に座るドレルの方に顔を見せて、またニヤニヤしながら訊いた。 「そんなに怯えなくとも、離陸の衝撃なんて、本当にたいしたものじゃあないんですよ。遊園地に行った事はあります?」 「なに?」  ドレルは顎が震えるのを必死で抑え、やっと答えた。運転手はやれやれとまた笑い、力を抜いて鼻から息を出した。 「遊園地ですよ。遊園地。行った事あるでしょう?一度ぐらいは。あれと同じですよ。聞いてますか?衝撃の話ですよ。たいした事ないんです。どんっ、と衝撃がくるけど、最初だけです。すぐに終わる。私なんて同僚と賭けをして、立ったままやった事もあるんですよ。あとは、音がうるさいだけ……」  推進ロケットに火がついたのだろう。頭にまで響く爆音が突然して、ドレルはまたきつくまぶたを閉じた。
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