3⃣

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ドアが開いた。 「佳奈、ちょっと…」 ノックも何もなかった。 その時私は ベッドに横になっていて 両肩の脇には 二本の腕があった。 だから、 私が直前まで 見つめていたのは、 天井ではなく 裕也の瞳、だった。 つまり、 客観的に表現すると 私の上には 裕也が 覆いかぶさっていて、 今まさに キスをするところだったのだ。 私たちは あの女が入ってきてすぐに はじかれたように起き上がり 一秒に可能な範囲で できるかぎり離れたけれど あの女は 金切り声をあげた。 「なっ…何してるのっ!  あなたたち」 「………」 私たちは まともな反応が かえせない。 「離れなさいっ!!  …汚らわしい  なんて汚らわしい…。  …これがどういうことか  わかってるの!?  あなたたちは…  動物にも劣ることを  してるのよっ…」 「…なによ、それ…」 私のほうが 少しだけ早く回復した。 「きょうだいなのよっ」 「はじめから…、  そうだったわけじゃない」 裕也の声が険しくなる。 「あなたたちはっ、  兄妹なのよ!?…」 「何を騒いでるんだ…?」 「浩司さん」 「親父…」 「どうしたんだ?」 裕也の目が その男を射る。 「…俺たちは、  俺と佳奈は…  もうずっと  付き合ってるんだ。  …あんたらが  再婚するより、  ずっと前からなっ…」 見開かれる瞳。 「…なんだよ?  文句でもあんのかよ!…?」 「…お前たちに  話さなくてはならない  ことがある。  …全員、下に来なさい」 すべてが、壊れようとしていた。
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