46人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「佳奈っ!」
その頃私は
許されない恋をしていた。
「裕也…?」
愛してはならない人を
愛していた。
「どうしたの?」
愛されていた。
「急に休講になったから、
一緒に帰ろうと思ってさ…」
言い訳をさせてもらうなら
「なんかうれしいな」
私たちはまだ
それが罪だとは
知らなかったのだ。
「なら、よかったよ」
少なくとも、その時はまだ。
「ねぇ、今度映画行こうよ」
確かに
あまり誉められた関係では
なかったかもしれないけど。
「どんなやつ?」
でも、はじめから
そうだったわけではないから。
「『〇〇〇・◇◇』ってやつ」
私たちの出会いは
ごくありきたりのものだった。
「あー、
《全米が泣いた》とかいう
ありがちな宣伝の…」
ごく普通の男と女として
出会ったのに。
「ねっ、行こ~よぉ」
あの人たちが、
私たちの関係を
勝手に
決まりの悪いものにした。
「いっそ、今から行こうか?」
もとはと言えば、
なにもかも
あの人たちが悪いのだ。
「でも…、いいの?」
本当は
私たちの罪では
なかったはずなのに。
「いいよ。行こう!」
あの人たちの罪なのに。
「うんっ」
私たちは手をつなぐ。
私たちは罪を背負わされた。
最初のコメントを投稿しよう!