プロローグ

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「佳奈っ!」 その頃私は 許されない恋をしていた。 「裕也…?」 愛してはならない人を 愛していた。 「どうしたの?」 愛されていた。 「急に休講になったから、  一緒に帰ろうと思ってさ…」 言い訳をさせてもらうなら 「なんかうれしいな」 私たちはまだ それが罪だとは 知らなかったのだ。 「なら、よかったよ」 少なくとも、その時はまだ。 「ねぇ、今度映画行こうよ」 確かに あまり誉められた関係では なかったかもしれないけど。 「どんなやつ?」 でも、はじめから そうだったわけではないから。 「『〇〇〇・◇◇』ってやつ」 私たちの出会いは ごくありきたりのものだった。 「あー、  《全米が泣いた》とかいう  ありがちな宣伝の…」 ごく普通の男と女として 出会ったのに。 「ねっ、行こ~よぉ」 あの人たちが、 私たちの関係を 勝手に 決まりの悪いものにした。 「いっそ、今から行こうか?」 もとはと言えば、 なにもかも あの人たちが悪いのだ。 「でも…、いいの?」 本当は 私たちの罪では なかったはずなのに。 「いいよ。行こう!」 あの人たちの罪なのに。 「うんっ」 私たちは手をつなぐ。 私たちは罪を背負わされた。
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