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あっという間に時間が過ぎ 四月になって 私は 大学生になり、 裕也と同じ大学に 通いはじめた。 もちろんそれは 親たちのいうように 偶然などではなく 私の子供っぽい故意だった。 これでも 必死に勉強したのだ。 同居生活は短かったけど 私たちは意外にも ぎくしゃくした家族では なかった。 もっとめんどくさかったり うざったかったりすることが あるのかと思ってたけど そうでもなかった。 無理にチチオヤづらする人も ハハオヤづらする人もいないし みんなに個室があったので 淡泊なルームメイトと 一緒に暮らしてるみたいに 無関心な リラックスした生活だった。 それでも 親たちが 自然な夫婦のように 暮らしている前では 私と裕也は 不慣れな義兄妹に擬態していた。 私たちは とても用心深かったのだ。 デートの時だって わざとタイミングを 外して出掛けたし、 帰りだって ずらしていた。 家のなかでは 何もできないから もちろんホテルを使うわけだけど せっかく《同棲》してるのにと 私たちはいつも 文句を言って笑っていた。 一つ言えることは 秘密を共有するということが 関係を強くする ということだ。 家のなかでは 暗号のようなやりとりで 意志を伝え合い、 ときどき 意味深な目配せをして そのスリルを楽しむ。 でも、 絶対に隔たっている。 その代わり 一歩外に出ると、 もしかしたら 新婚夫婦以上に べたべたと 親密に、仲睦まじく とにかく一緒にいた。 私たちは幸せだった。 自由だった。 好きなだけ愛をささやき 好きなだけそれを 確かめ合った。 本当に この頃が一番幸せだった。
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