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「"イメージズ・アンド・ワーズ"!」
夏樹が新たに水晶を割ると、闇属性の影で出来た槍が三本出現した。夏樹が指先をユリゼンへ向けると、それらは順にユリゼンへと真っ直ぐ飛んでいく。
しかしユリゼンは軽くフェイントを入れつつ、それらをかわし切ると、持っていた刀を夏樹へ投げる。
夏樹は何とかかわそうとするも、それは彼女の左肩を斬ってしまった。
「夏樹!」
隆二はそれを見て思わず声を上げてしまったが、ユリゼンの狙いは隆二。
ユリゼンは隆二に殴り掛かる。
思わず剣でカウンターを入れようとするも、丸腰の相手に反撃することはすなわち、ダメージが返って来ることになる。
硬い鎧を纏った拳に頬を殴られると、隆二は意識が飛びそうな感覚を覚えた。両足が地面から離れる。
そしてそんな隆二へ、ユリゼンはさらに左手を伸ばす。
隆二の首元を握ったユリゼンは、そのまま隆二を真っ直ぐ引きずっていく。
呼吸ができないほどの力で首を潰されている。
隆二は剣を手放し、ユリゼンへ掌を向ける。
「"…………"!」
しかしユリゼンは右腕を交差させ、そんな隆二の右手首を掴み、へし折った。
折れた手から離れた光のレーザーは天井へと飛んでいき、一部を破壊した。
「隆二……!」
肩を押えながら、夏樹はあまりの痛みに膝をついていた。
そしてユリゼンが今、何をしようとしているのか理解した。
(この敵、先に隆二を……)
それは、戦闘することしか考えていない敵とは思えない、ギミックを利用した"戦略"。
ユリゼンは、そのまま転送の石盤に隆二を押し付け、この場から強制的に離脱させた。
(隆二のスキルは敵に相性が良すぎた。だから先に排除されてしまった。
なんてメタ的な発想……。まるで中にプレイヤーが入っているみたい)
勢いの収まりつつある隕石が外から壁に衝突し、爆発と共にその壁を突き破ると、大きな爆発に反応した夏樹は思わずそこに顔を向けた。
連鎖的に崩れていく壁。そこから先、外に広がる景色を見て夏樹は言葉を失った。
「え、ここ……」
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