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「なんだここ……」
と、夏樹の隣にやってきた啓祐もそれを確認したようだ。
神殿の壁を突き破ったその外に広がる景色は、一面の雲海。
「え、何?こんなに高い山なんてあった?」
と、夏樹は自分たちが今、雲より高い山にいるのだと考えた。しかし啓祐は違った。
「いや、山なんかじゃない。信じられないけど、て、"天空"じゃあ……」
雲を突き破り、青空を背景に複数のドラゴンが縦横無尽に飛び交っている。
「天空……!」
天空という啓祐の言葉を思わず復唱してしまった夏樹だが、啓祐は特にそれに自信があったわけではない。半分ぐらい妄想だ。
「いや、やっぱあり得ない。
建物が空に浮くのはファンタジーだったらあるかもしれないけど、それよりも、地上からそんなものは見たことないし……」
「確かに……」
そこでガシャッと音が鳴ると、二人はユリゼンの方へ振り返る。
「とにかく今は目の前の敵だ。みんなに知らせるのはその後だ」
啓祐が剣を天に翳し、雷を纏う。それと同時にユリゼンは駆けた。
間髪入れずに啓祐が剣を振り、雷の一閃を放つも、ユリゼンは既にその攻撃を読んでいたようだ。
高く跳び、それをかわしてみせた。
そしてそのまま二人の間に着地したユリゼンへ、啓祐はダメージが反射することも忘れて斬りかかる。近くの敵へ斬りかかるのは、この世界で数々の戦闘をこなしてきた啓祐に染みついた反応だった。
それが最悪の悪手だと気づいたときには、既に啓祐は自身の右腕にダメージを受けていた。ユリゼンはそのまま啓祐を足払いで倒す。
「"イメージズ・アンド・ワーズ"」
咄嗟に夏樹が水晶を出現させるも、ユリゼンはそのまま手を伸ばし、夏樹よりも先にその水晶を破壊した。
「しまッ……!」
ユリゼンが手を広げると、そこから一度大きな爆発が起きた。
夏樹が用意した、記憶の魔法の主導権を奪われてしまったのだ。
全身を焼かれながらも、夏樹は何とかその場から逃れる。
ユリゼンがここで一度地面を蹴ると、夏樹の逃げた方向とは別のところへ跳んでいく。突然の行動に何かと考えるも、答えは簡単だった。
ユリゼンは先ほど夏樹に投げた刀を拾っていたのだ。
夏樹は顔についた煤を拭う。
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