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ユリゼンが刀を抜くと、啓祐は胸を押えながら倒れた。
それを見た夏樹は覚悟を決める。
(……違う。私たちで倒さなきゃ、私が倒さないと意味がない!さっき覚悟を決めたばかりじゃない!)
「"イメージズ・アンド・ワーズ"!」
夏樹は水晶を砕く。
ユリゼンは倒れた啓祐の首元に、狙いを定めるようにして刀を押し当てると、大きく振りかぶった。
啓祐は、自身のすぐ目前に死が迫っていることを悟った。
いくらHPが高くとも、体に致命的な一撃が加われば死は平等に訪れる。
しかしこんなところで、こんな形で死にたくはない。
自分の最期が斬首なんて……。そんな悔しい想いは、死の前では戯言以下のもの。
啓祐は目をギュッと閉じた。
(依菜……ごめん)
しかしその時は訪れなかった。
顔を上げた啓祐は、何が起きたのかいまいち把握できなかった。ただ、夏樹が助けてくれたということだけはわかる。
夏樹はイメージズ・アンド・ワーズの記憶から、高速移動できる魔法のエクスプレスを取り出していた。
夏樹はそれにより、ユリゼンを抱えて前方へ超高速で飛び出した。
(啓祐君は絶対に死なせない。だって、私たちをここまで連れて来てくれたんだもん。それに……この世界でやっと出来た、大事な"友達"なんだから!)
夏樹はエクスプレスの記憶の水晶ともう一つ、同時に破壊して取得していた必殺技を放つ。
「"イリミネイター"!!」
夏樹がユリゼンを押し出した手から放たれたのは、青白い電撃を帯びたエネルギー体。その姿はまるで"電撃の鳥"。
崩壊した壁際ギリギリで放たれた電撃の鳥によって、ユリゼンはそのままフィールドの外へと押し出された。
そのまま落下していくと、やがて雲に飲まれて姿を消した。
「…………」
夏樹はユリゼンの落下を確認するのと同時に、雲海の先に広がるある光景を目の当たりにしていた。それは、啓祐の立てた「天空」という仮説を真実へと裏付けるもの。
「す、すげーよ……!」
啓祐の胸からの出血は収まっていないし、意識を失いそうなほどの痛みを感じている。生きているのが奇跡だと自分で思うほどだ。
それでも啓祐は、とにかく夏樹を賞賛したかった。
「夏樹、本当に助かった。俺、後少しで……」
ゆっくりと振り返った夏樹の姿は、逆光のせいでよく表情が読み取れなかった。そんな夏樹は突然胸を押え、倒れた。
ユリゼンを啓祐から剥がしたとき、ユリゼンはその刀を夏樹に突き刺していた。夏樹は刀で身体を貫かれたままイリミネイターを放っていたのだ。
それは、この戦闘に勝つための覚悟のようなもの。
「ま、待ってろ!今治療するから……!」
身体を這ってでも最優先で夏樹を治療すべきと考えた啓祐は、剣を杖の代わりにして立ち上がる。
が、啓祐はそこに信じられないものを見た。
「夏……」
穴の空いた天井から、先ほどフィールドの外に落したはずのユリゼンが降って来たのだ。
まるでそのすべてがスローモーションのようにも感じる。
気が付けば、ユリゼンは倒れる夏樹に刀を突き刺していた。
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