ガーディアン

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「や、止めろ……!」 すでにフラフラになっていた啓祐ができたのは、敵に対して情けなく懇願することだけだった。 無駄だとわかっている。それでも啓祐の想いが溢れた。 しかしそれは奇跡というべきなのか、啓祐たちを分析したユリゼンがどう判断したのかはわからない。 とにかく啓祐の言葉が届いた。 ユリゼンは夏樹から刀を抜き、血を払いながら啓祐の方を向いた。 「来い……!」 啓祐がフラフラと剣を構えると、一度胸から血が噴出した。 今向かって来られても、まともに戦えるかはわからない。 それでも今、やれるのは自分だけだ。 何とか剣を掲げるも、啓祐は震える手を止められず、剣を落としてしまった。 その時、ガラスが割れる音が聞こえた。 そして夏樹のか細い手がユリゼンの足首の甲冑を掴む。 「"…………"!」 夏樹が何かを唱えると、ユリゼンは何か見えない力によって地面に叩き付けられた。 ユリゼンを中心に床に刻まれた十字が示すのは、紛れもなく強力な魔法の一つ。それに巻き込まれたユリゼンの甲冑はバラバラに吹き飛び、消滅した。 敵を撃破したことを確認すると、夏樹は安堵の表情を浮かべた。そして、いないはずの神に感謝した。 "限界"を超えてもなお、自分を動かしてくれたことに関する感謝。 夏樹はゆっくりと目を閉じる。 啓祐はそんな夏樹の姿を見て、酷く動揺した。 「な、夏樹!待ってくれ!」 初めは予感めいたものからではあったが、夏樹の身体が徐々に光を纏っていくのを見ると、それは最悪の確信へと変わる。 「…………」 夏樹は目を閉じたまま何かを言った。届かない声は、夏樹が啓祐に伝えたかったもの。 その口の動きから啓祐が読み取れた言葉は「ありがとう」だった。 啓祐の目には自然と涙が溜まり、受け入れがたい現実に押し潰され、膝から崩れた。 「嫌だ……。なんで……」 このゲーム世界で最も嫌いな瞬間が、この、プレイヤーが光の粒となって消える時。そしてそれを見届ける瞬間だ。 【死亡:相馬夏樹】
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