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啓祐は、気が付くとセントラル島の祭壇の前に立っていた。
「啓祐!」
彼の帰還に気づいた依菜が声を上げると、真っ先に隆二が駆けつけた。
既に夏樹の死亡通知は行っているはずだ。
啓祐は、夏樹と当初からの仲間だった隆二に合わす顔がなく、この場からすぐにでも消えてしまいたい気持ちだった。
それでも彼女の最期を伝えなくてはならない。
「その……倒したんだよな?」
やって来た隆二が最初に発したのは、夏樹のことではなく、攻略の進捗。
しかし啓祐にはわかる。彼はただ平常心を保とうとしているだけなのだ。
「あぁ……」
啓祐は恐る恐る隆二の顔を見ると、二人は一瞬目を合わせた。
まるで時が止まったかのようだった。
隆二は、目を真っ赤に腫らした啓祐の顔を見てその気持ちがすべて自分の中に流れて込んで来る感覚を覚えた。
そして啓祐もまた同じ。隆二の気持ちを考えると、とても居たたまれない気持ちになった。
「ごめん……!許してくれ……!」
啓祐はその言葉と同時に、涙と鼻水を垂らす。
隆二は一度鼻をすすると言う。
「止めろよ、そんなの……。
誰かのせいにしたくてしょうがないってのに、これじゃあ、お前のせいにもできねぇじゃねーか……」
少し離れたところから見ていた依菜も、受け入れがたい事実に、静かに涙を流した。
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