エルセルム

10/39
139928人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
啓祐ははっきりとそう言った。 しかしこれでは、隆二が先ほどから頑なに断ってきた「シャドーからの協力依頼」を、逆にこちらからすることになる。 「おい、だから言ってるだろ。こっちから頼むなんて本末転倒だ。勢力に協力するなんて……」 「隆二、あいつらはもう、勢力じゃあないんだ。俺らが魁斗とジョンに協力を依頼するのと同じ」 「いや、それは話の次元として違う」 「そうだな。もっと上の次元の話だ」 「お前なぁ、屁理屈は……」 「これがうまくいけば、暗号を解いた先に進めることと、セントラル島の攻略が有利になる。あの人たちは絶対に戦力になる」 「本当にいいのか?シャドーはゲームクリアのレースから脱落したんだ。 それなのに、あいつらが自力で絶対にたどり着けない攻略を提供することで、またゲームクリアのレースに復活しちまう」 「そうだ。でも、パラレルワールドに情報がいくよりかは、よっぽど先を越される心配はない。 それにこっちはもう仲間を一人失ったんだ。 俺はさ、もうこれ以上誰も欠けて欲しくない。少しでもクリアする確率上げるのに、シャドーの手を借りるのは有りだと思う」 「魁斗たちは良いのか?」 隆二は思い出したかのように二人に聞く。 大人数で群れることを特に嫌いそうな彼らからは、否定的な意見が貰えると考えた。 魁斗はタバコに火を付ける。 「どっちでもいい……ってか、どうでもいい。 元々啓祐主導のイベントに、俺が口出しする権利はねぇと思ってる」 てっきり「俺らだけで十分だ」と言われると思っていた啓祐にとっては意外だった。 「だけどな、啓祐。シャドー全員が天宮クラスじゃあねぇ。 人数が増えれば、向こうにだって犠牲者が出る可能性が出て来るんだ。 俺ら以外の奴らが死ぬことは平気だなんて言わないよな?」 「わかってる。その辺の難易度のことはしっかり話す。 その上で、覚悟のある人とだけ攻略をするんだ」 隆二は観念したように頷いた。 「……わかったぜ。なら、交渉は啓祐に任せた」
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!