エルセルム

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少しすると、遠くの城の方からドラゴンの大群がやってきたのが確認できた。 ディオンはそれを確認すると頷く。 「迎えが来たようだな。これから城へと連れていってやる」 一方でその光景を見た優希は顔を歪めていた。 「えっ、あれ全部ドラゴン?なんかキモイなぁ」 やがてドラゴンの大群が到着すると、先頭のドラゴンの頭上から一人の大男が顔を覗かせた。 「おいおい、ディオン、これはどういうことだ?」 「やぁヴァシリス。早かったね。事態はどうやら、少し複雑な展開を見せているようですよ」 ヴァシリスは啓祐たちを不審な目つきで一瞥した。 「ん?こいつら、翼が……」 「彼らの証言が誠ならば地上の人間だ。どうやら古代遺跡の魔術を向こうから起動してやってきたとのことだ」 「誠だよ!」 と、依菜が言うと、啓祐は同調して強めに頷いた。 ヴァシリスはディオンの言葉を聞くと、神妙な顔を見せた。 「……どうやらマジみてぇだな。しかしこれ、どうすんだ」 「こんな事態、マニュアルに載ってないから私では対処できない。 それならば直接王女に判断してもらおうと思ってな」 「大丈夫なのか……?」 「大丈夫だ。それにここは天空だ。地上の者は我らに従う以外に何もできまい」 「それもそうだな。よし、お前ら乗れよ。王女に会わせてやる」 ヴァシリスの合図で、ドラゴンたちはこのバルコニーの横に列を成した。 それを見て春斗は言う。 「すげーな。ドラゴンってこんな風に従えることができんのか」 ディオンは言う。 「我々天空の民はドラゴンと共生しているんだ。これぐらいのことは誰だってできる。 とはいえ、彼は特別だ。彼はドラゴンと心を交わすことのできる、龍人族なんだから」 「へー。よくわかんねーけど、凄い人なんだな」 「ちなみに彼も天空の三騎士の一人だ。安心すると良い」 「いや、天空の三騎士が信頼できるやつらなのかわかんねーって」 啓祐たちはドラゴンへ乗るため、バルコニーの脇で列を作る。 ディオンはそんな彼らの間を通り、そのまま神殿の奥へと進んだ。 「私は念のため、ユリゼンのところの様子を見て来るよ」
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