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「直接触れる系の攻撃はダメだ。やるなら……」
と、啓祐は声を上げつつ、剣を掲げる。落雷と共に剣に雷のエネルギーを纏った。
「こういう、近接以外の属性攻撃だ」
啓祐がユリゼンに向かって走り出すと、ユリゼンも刀を構えた。
何かを繰り出してきそうな気配を感じた隆二は、その手から光の光線を何発も放った。
それが次々にユリゼンに命中すると、ユリゼンは怯んだ。
「ナイス隆二!これで……!」
啓祐は隙だらけの敵へ、雷の一閃を放つ。
が、啓祐の一撃は空中の歪な雷の斬撃の軌跡だけを残し、空を斬った。
ユリゼンは、啓祐の攻撃の寸前、凄まじいほどに跳躍したのだった。
そのまま天井を蹴り、剣を突き出して啓祐へ迫る。
啓祐はそれを回避するも、着地したユリゼンはもう一度地面を強く蹴り、啓祐の方へ跳んだ。
重くて邪魔そうな甲冑を着ているとは思えないほどの俊敏な動きに翻弄され、ガードが間に合わなかった啓祐はざっくりと腹を斬られてしまった。
腹部を押えながら、啓祐は咄嗟に下がる。
(な、なんだこいつの攻撃力……!
俺のステータスを突き抜けてきたのがはっきりわかる……!)
下がったはずの啓祐へ、ユリゼンは追い打ちと言わんばかりに何発も斬りかかり、防ぎ切れなかった啓祐は最後に蹴り飛ばされてしまった。
「啓祐君!」
声を上げた夏樹は、既に別の水晶を手にしていた。
ユリゼンは次に夏樹へターゲットを決め、走り出した。
啓祐はそれを見て、怪我の回復もせずに走り出した。
(くそ……!間に合わない!)
比較的ステータスの高い啓祐ですら驚くほどのダメージを受けたのだ。ユリゼンの攻撃を隆二や夏樹が喰らってしまったら大ダメージは必至。
距離的に、夏樹をカバーすることはできない。
が、ここで隆二が光線を放ち、ユリゼンの足に命中させると見事に転ばせることに成功した。
それでもすぐに起き上がろうとするユリゼンに対し、啓祐は距離を詰めた。
このまま攻撃することはできないし、剣に雷も纏っていない。
そこで啓祐は立ち止まり、剣を掲げる。
その真上は天井。穴の空いた天井から雷を呼ぶことはできない。
「"雷狼の構え"!」
それでもそのまま技を放つと、雷は天井を突き破った。
瓦礫が降り注ぐと、啓祐はすぐさまその場から離れる。
瓦礫に埋もれるユリゼンを見て、啓祐は言う。
「俺らも逃げた方がいいかもしれない。
俺らの想像よりも強いぞ、こいつ……!」
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