エルセルム

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全員分用意されたドラゴンに各々乗った。ドラゴンは移動用として日常的に使われているのだろう、その背にはドラゴン専用の鞍が取り付けられている。 啓祐の乗ったのと同じドラゴンの背に依菜も同乗した。 「なんで一緒に乗るんだよ。一人一体だろ?」 「別に良いじゃん。ちょっと恐かったんだから」 「二人共仲良いねー」 と、優希は自分の乗るドラゴンを啓祐たちのドラゴンの横へつけた。 「いや、あの、勘違いするなよ!これは……」 「あはは、全然聞こえないー」 と、彼女はそう手を振り、ドラゴンを旋回させていった。既にドラゴンのコトンロールを会得している優希のテクニックに驚きながらも、とても真似できない啓祐はヴァシリスによるオート操縦に身を任せた。 それから目の前に迫る城を見て、啓祐と依菜はその大きさに改めて心を奪われた。 「す、すげぇ……」 城からは大きな樹が伸びており、城と一体化していた。太陽に照らされ、天空に浮かぶ巨大樹は圧巻の神々しさであり、感動すら覚えた。 啓祐はふとナビの表示を確認した。そこにあったのは、現在のロケーションを示す名称。 『天空都市・』 やがてヴァシリスは天空に浮かぶ城の下に空いた穴へと、ドラゴンたちを誘導していく。 「もう着いちゃったねー」 と、依菜は周囲を興味津々に眺めながら言う。 内部は、先ほどまで啓祐たちがいた遺跡と同じ材質でできているようだ。そこに樹の根が浸食している。 やがて啓祐たちは、その先に広がる広大な地下空間でドラゴンから下ろされた。 依菜は伸びをすると、尻を擦る。 「お尻痛かったー」 最後にヴァシリスがドラゴンから降りると、周囲にいた兵士たちが一斉に敬礼した。 「おかえりなさいませ、ヴァシリス様」 「お前らちょっと道を開けてくれ。この者たちに王女と謁見することを許可した。 お前ら、付いて来い」 ヴァシリスを先頭に巨大な螺旋階段を上がっていく。 「そこに木の根っこが生えてるだろ? 俺らエルセルムの民にとって、とても神聖なものだから踏まないようにな」 そう言われると、啓祐の隣を歩く依菜は急にサッと横へズレ、何か笑って誤魔化した。啓祐はそんな彼女を見て呆れたようにため息をつく。 するとここで、シャドー側のゲームキャラクターであるエリアスはヴァシリスに訊ねた。 「この樹の根っこ、一体何なんだい?城全体を覆っているようだけど」 「これは神樹の根。 もう何千年も何万年もこの世界を支えている。俺たちエルセルムの民にとっては、神にも等しい存在だ」
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