あなたの声を聞かせて

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もう罪悪感や後ろめたさなんて完全に消えうせていた。 そう、私はこんな風に存分に話を聞いて貰いたかったのだ。 誰かに自分の話を聞いて欲しくて仕方が無かったのだ。 「私は…私は……」 どこまでも広がる妄想の中で、25歳の「愛実」が鮮明に浮かび上がる。 血管が浮き出る程に透き通った白い肌と桜色の唇。肩で緩やかにウエーブのかかった柔らかな栗色の髪に、しなやかで長い指先。 淡いピンクの部屋着に包まれた華奢で儚げな身体…… あんパンにかじりつきながら、夢中になって荒れた指先を携帯ボタンに叩き付けた。 ――チリンチリン 揺れるストラップの鈴の音が逸る心に拍車を駆けて一層私を煽る。 嘘を幾つも並べ立てるうちにそれは全て自分の中で現実となっていく。 既に人生に終焉迎えたも同然だった43歳の女が、指先一つで若く可憐なサイトの天使へと一夜にして変貌出来るのだ。 全ては虚構の世界。 そんな当たり前の事すら気付ずきもせずに、私は泥沼の闇の中へと一歩ずつ足を踏み入れて行った。
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