悲憤慷慨のΘ

6/16
前へ
/61ページ
次へ
「今、僕の事気持ち悪いって思った?誤解しないでくれ。別に疚しい気持ちでアカネさんを見ていた訳じゃないから」 「気持ち悪い」 私は吐きつけるように捨て言葉を残し、手提げ鞄を持ってそそくさと教室を出ようと、足を速める。 「Θなら、僕が持っているけど?」 ぴた。 私の足が止まった。 Θという単語が、私の手を掴む。 「何を言ってるの?十六夜くん。あなたみたいなおとなしい人が、Θを?」 私は振り返り、机の上に膝を立てながら座る十六夜くんを直視する。 彼は、言った。 「うん」 オレンジ色の夕日と 彼の屈託無い笑顔が 重なって まぶしい。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

145人が本棚に入れています
本棚に追加