悲憤慷慨のΘ

10/16
前へ
/61ページ
次へ
「……不思議だよ。アカネさん。自らすすんでΘが欲しいだなんて」 やっぱり。十六夜くんも、Θの魅力に気づいていない。わかってない。 「私、何をやってもドジばっかりでね。あなたみたいに頭の良い人には、私の気持ちなんかわからないんだよ、きっと。私、神様が作ったこの世界が大嫌いなの。わからないよね」 「そんな事無いさ」 十六夜くんの真剣な眼差しが、私を貫くかのように。私に視線が向けられる。 「僕だって、そうだ」 「だからΘを使って、何もかも忘れたくて。この世界の裏側に有る、違う世界に入り込むんだ」 「空想と幻惑、悲憤慷慨のΘの世界へ、精神の世界へ。飛び込むんだ」 「アカネさんも。そうでしょ?Θの世界へ逃げていきたいんだよね……」 私は 泣いていた 十六夜くん 私は…… Θの世界に行きます。 裏側の世界 空想と幻惑 悲憤慷慨の世界へ…… もう 私は戻れない。 裏側の世界から 表の世界に戻る事は ……ほぼ、不可能だから……
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

145人が本棚に入れています
本棚に追加