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馬鹿馬鹿しいとは思った。
くだらないとも思った。
しかし
それが嘘だという確証は無かった。故に、俺は最悪の事態を免れるために、誰も居ない城山公園まで足を運んだ。
昨日、雨が降ったからだろう。地面はしっとりと水に浸り、坂道は落ち葉で敷き詰められている。
まるで天然のカーペットが出来たみたいだ。風情を感じながら、ゆっくりと坂道を上る俺。心臓の鼓動を高鳴らし、不安と緊張を抱きながら、指定された場所にまで到達する。
ぽつんと置かれた、錆び付いた青いベンチに座る男性。肘を膝に乗せ、悠長に構えながら、近づく俺を不適な笑みで出迎える。
「あんたが……メールの奴か?」
先に口を開いたのは俺の方だった。
十メートル程距離を置き、俺は俯く男性を睨みつける。
「H」
「ああ?」
静かに、しかし力強く発音する男性。顔を上げ、完全に目線を合わせる。
「僕の名前だ。これからは僕の事をそう呼んでくれ。死にたくなければね」
H……?
イニシャルか?
いや、深く気にする事は無いのだろう。
Hはおもむろにジャケットから黒い機械を取り出した。テレビのリモコンくらいの大きさの、片手で持てるサイズの機械。
先端からは青白い筋を発生させ、不穏な音が不気味に響き渡る。
バチバチバチバチ
……スタンガンだ。
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