951人が本棚に入れています
本棚に追加
結城の部屋とはうって変わり、随分と女の子らしい部屋。
多くのぬいぐるみが、ところ狭しと並べられている。
「起きなさーい、優ちゃーん」
呪文を唱えるかのように。
まるで天使を彷彿させる、妹の無垢な寝顔。
マシュマロみたいな頬を、汚れた人差し指でつっついてみる。
優はくすぐったそうに表情を歪め、口をすぼめる。
「…んん」
反応の面白さに、口に手をあてて笑いをこらえる結城。
この一連の様子をはたから見れば、完全にただのロリコンだ。
…でも違う。
結城にそんな性癖はない。
これは、ただの腹いせである。
結城の通う高校はなかなか遠いため、必然的に朝早くに起きなければならない。
だが小学六年生である優の小学校は、自宅から徒歩十分程度。
よって、現在時計の針は七時を回ろうとしているのに、すやすやすやすやと優雅に寝てますわこれ。
結城は、それがどうにも腹立たしかった。
故に、腹いせ。
……結論。
ただ大人げないだけ。
最初のコメントを投稿しよう!