プロローグ

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朦朧とする思考。 十秒たった頃に、事態をようやく理解する。 「…お、起きたのか?」 優の見事な頭突きが、結城の顔面に炸裂したのだ。 妹よ、いつの間にこんな技を身につけたのか。 「うー…」 しかし優の表情は虚ろで、目を擦る度に寝癖のついたロングヘアーが揺れる。 「…ち…」 弱々しく口を開く優。 「ち?」 反復する結城。 「…ちくわが爆発したよ、お兄ちゃん…はんぺんも爆発したよ…」 …我が妹ながら意味がわからない。 とりあえず、寝惚けているようだ。 再びベッドの上に倒れた。 「…って」 フローリングの床に、無造作に放り投げられた下着が視界に入り込む。 妹ながら結城とは反対で、優はけっこうだらしない。 「まったく…下着はちゃんと片づけろって言ってるのに…」 ため息を吐きつつ、下着を拾う。 へっへっへ、マイコレクションに入れてやろうか。 …と思っているわけではない。 純粋な善意だ。
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