雨の先

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中学の時からの、初恋が、俺の一言で、終わった。たった5ヵ月。その間たくさんのことがあった。全てが、心の奥にしまわれていく。 明日から、麻実は、俺の彼女ではなく、茅ヶ崎の許嫁になる。俺は、ただのダチになり下がった。どうみても、ださい。 麻実の涙を見て、本心じゃないことは、分かった。だけど、俺には、何も出来なかった。笑わすことも、喜ばすことも、励ますことも。 泣きながら帰る麻実の後ろ姿を見ながら、自分の無力さを痛感した。 何もしてやれない。本当にそうか。 あいつのため。本当にあいつのためか。 本当は、自分のためじゃ無いか。茅ヶ崎には、勝てない。そう思ったからだろう。 自分に負けた。ただ、それだけ。言い訳した。自分の弱さのせいで、全て終わったのだ。 と、自分に言い聞かせて、麻実とは、逆の道を歩いた。 人生も、麻実とは、違う道を歩み始めた。
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