第一章

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「それじゃあ姉ちゃん。行ってくるよ」 バスケットシューズを履き終えた俺は、トイレに篭っている(腹を下したらしい)姉にそう言い残し、二度程深呼吸をしてドアを押し開いた。 教科書よし、鞄よし、服装よし、髪型多分よし、靴よし、そして俺の顔よし(冗談です)。 なのに…… 「天気はすこぶる悪い……」 姉の仕事の都合でこの町に引っ越してきた俺は、人生初かつ未来を円滑に進めるかそうでないかの命運を分ける「転入」というイベントを起こしてしまっている。 どす黒い雨雲から放たれる、傘を破る勢いで地面をたたき付ける暴風雨は、まるで俺の未来を表しているようでテンションは地の底までがた落ちた。 今日の天気は百パーセントで洗濯物も逃げ出す程の快晴です。とニッコリ作り笑顔で言っていた天気予報のお姉さん。 あれはやっぱり作り笑顔だったのか……。そうか、あんたも社会の歯車となった仕事人か。 「ちっ……」 起こってしまっている事をくよくよ言っても仕方ない。 ビニール傘を差し、足取りは重いが人類にとっては大きな一歩を踏み出した。  
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