第3章

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 いつもは、バイトが終わったらすぐ帰るんだけど、その日は雨も降ってて、お客さんが少なかったからいつもより早く片づけ終わってたんだ。 「マスター、申し訳ないんですけど、私一応受験生なんで、今月いっぱいでバイト辞めさせて下さい」  ガバッと頭を下げながら言った。  マスターは携帯をいじっている。メールかな?メール送るような相手いたんだ。 「お前、いつも急だよな?働かせて下さいっていきなり言ってきたし…。まぁでも、仕方ないか、バイトのせいで受験失敗したって恨まれても困るしな、分かった。でも何で今月いっぱいなんだ?」 なんだろ?大の大人が携帯いじりながら人と話すってさ、どうなんだろ…。 「あ~来月から、放課後補習が始まるんですよ…。」 本当は終業式の日に担任が言ってたんだけど、失恋のショックで忘れてたなんて言えない。 「ふ~ん、でも、お前補習受けなきゃならん程頭悪かったのか?」 可哀想な人を見るようにみないで下さい。いい加減携帯ボチボチやるのやめて下さい。 「違いますよ!失礼なっ。これでもずっとトップをキープしてるんです、補習は全員なんです。」 ちょっと必死になって言った。 マスターはさも意外だと言わんばかりの顔をしている。 「お前、確か清廉だったよな?」 まだ信じてない様子だ。もう帰ろう…。 私はため息をつきながら言った。 「そうですよ清廉です。マスター、私帰ります、お疲れ様でした」
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