盗賊のお仕事

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現れた少女はやはり魔人に襲われていた少女と同一人物だった。 魔人に襲われていた時は表情を恐怖と絶望に染めていたが今はその面影は無く、月光姫の名に恥じない美しさを称えていた。 金の髪は一本一本が月光のように優しい光を帯びており一歩歩く毎に揺れる髪がキラキラと光る。 その顔も芸術家が丹精に時間をかけて作ったどの彫刻よりも美しく、それでいて際立ってどのパーツが美しいというのではない。 開かれた金の瞳、筋通った鼻、微笑みを称えた口元、完全に調和のとれた黄金比によって少女の美しさは成立っている。 少女は玉座の横まで来ると一旦止まりスカートの裾を持ち上げフワリと優雅に一礼をする。 そこに先程レイジの腕の中で震えていた少女はいなかった。 少女 『先程は危ないところを救っていただきありがとうございました。』 レイジ 『あ、あぁ。』 少女の一連の動作に見とれていたレイジにはその一言を絞り出すので精一杯だった。 一瞬、少女とレイジの視線がぶつかり二人だけの世界が形成されかけた所だったがそれを親バカがぶち壊す。 グリュート 『んっ! んん! オホン!』 グリュートのわざとらしい咳に我を取り戻す。
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